INDEX
■OCNが生まれる経緯〜当世電話料金事情
■OCNを生みだす経緯〜行政の役割
■OCNを裏付けていく経緯〜行政の次なる役割
■監督官庁からみたOCN構想について
■インターネットフォンは認められるか?
■OCNが生まれる経緯〜当世電話料金事情
電々公社の時代に「電話を如何に普及させていくか=ユニバーサルに国民の中に定着させること」が課題であって、国が直接やっていた時期をあわせると100年かかってやってきたわけです。ところがここ数年の間、音声の双方向だけではなくて、画像・映像の双方向をやりたいという気運が高まってきました。もちろん、10年ほど前からキャプテンにみられるような画像通信の動きはあった訳ですけれども、しかしここ2〜3年…画像通信をやりたいという傾向が非常に強くなってきています。そこで特に問題となってくるのは料金の問題です。OCNについても、いろいろ技術的なこともあるでしょうけれども一番多くの方の関心は料金の問題だと思います。
いままでの音声の電話の場合には…できるだけユニバーサルに広げて行かないと駄目なので…あまり同時に沢山使われてシステムがダウンしないように「利用抑制型」の料金体系にしました。すなわち従量課金ということです。使った分量に応じてだんだん高くなっていくというものです。
以前、高度経済成長の前には…「市内料金は一回いくら」だったんですけれども、それが「3分いくら」に変わりました。何故そうなったかというと、高度成長時に電話がずいぶん普及しました。そうすると今度は一斉にみんなが電話をかけはじめる、交換機がパンクしてしまうということになるわけです。そこで、利用を抑えないといかんということになりました。
どれだけかけても一定。一回いくら…だったらたくさんかけるに決まっているわけです。ところが秒数に応じてだんだん高くなりますよ…というと無駄な会話をやめようと思うので利用抑制にいたる。したがって「3分いくら」にして、あとは「何秒ごと」という風にした。そのことによって交換機がパンクしない、みんなが使えるようになった、そういうことで広がっていった。
また、当時は銅線をつかって電気信号を伝えていましたので、すぐに信号が弱くなります。そこでまた強くしてやって遠くへ運ぶ、また弱くなる…というので遠くにいくにしたがって手間が沢山かかるということはあったわけです。したがって、時間が多いほう、あるいは距離が遠いほうが高いというのは当然であったわけです。
ところが時代が変わって今や光ファイバーの時代…50キロ、あるいはもっと無中継でも弱くならないでそのまま伝わるようになってきた。もちろん光ファイバーの設備投資はあるけれども、遠くに行けば行くほど手間がかかる…そういうことはもう無くなってきたわけです。それから今の交換機は昔のものと違って非常に優秀になっておりまして、一度に沢山のアクセスがあってもそんな簡単にパンクしなくなってきました。そうすると高度経済成長のときのように需要を抑制しないといけないというネットワークではなくなってきたという事実があります。ただ、これまでの経緯があるので、従来の料金体系を踏襲してきた…そういう事情はあるわけです。
そこへ出てきたのが今度は画像というものです。とくにパソコン通信…これはキャラクタベースのもの含めてですけれども…電話の場合に比べると利用者の感覚というのは「時間の経つのを忘れてしまう」というところがあったりします。それで「沢山利用すればするほど高いというのは如何がなものか」という声が上がってきたわけです。
■OCNを生みだす経緯〜行政の役割
もともと通信料金というのは、全部に必要な費用と、全部の収入がトントンになれば済むようにすれば良いわけです。したがってその料金は…どのように切り分けるかという問題は政策判断でいいわけです。だから、月一回も使わない人と24時間フルタイムでずっと使う人が同じ料金ですっていうのは…たとえば既に専用線の分野がそういう風になったりしています。また、その量に応じてやりましょうというのは現在の電話がそうだし、あるいは電報も文字の量に応じて高くなったりする。一般に映像の観点で行くと…たとえばテレビを考えてみる。CATVにしろ地上波、NHKの受信料にしろ、あるいは衛星にしろですね…全然見ない人と見る人とが同じ料金を払っているはずです。もちろん見た分だけ払えば良いじゃないかという考え方もあるけれども、みんながどれだけ見ようが同じだ…という考え方もある。映像系はどっちかというと従量系でいくよりは定額的にやるほうがいいんじゃないか、というのが経験則上あるようです。
「定額料金」というのは先刻も申しましたように利用促進の傾向に働く。現在のネットワークを考えた場合にはかなり余力があります。どんどん使っても良いわけです。なおかつユーザ感覚からすると、例えば月何千円かで定額にして、全然使わない人もものすごく使う人も全部入れて定額にする。そういう割り方で良いじゃないかと言う声が結構強いというところがあるわけです。
以上のような次第で、これまでのように通信料金が電話に代表される従量課金、通信時間や距離に比例しなければならないという必然性は無くなってきたわけです。で、今後じゃあどうするかということですが、従来の「利用抑制」から「利用促進」になるような方向で行きましょう、というような議論がNTTの内部でもかなり検討されるようになってきている。
いずれにしても料金というのは、通信事業者がこういう風にやりたいということで決めるものです。ただ、あんまりたくさん通信事業者というものが出て来ないものですから、勝手なことやるかも知れない…というので、チェックだけさせていただきましょうというのが郵政省の行政なんです。決して郵政省が決めるのではなくて、NTTからやりたいというのが出てきていて、それがおかしくはないかということでちょっとだけチェックする…というのが郵政省の行政です。ですからNTTが「利用促進で行きたい」というのであれば当然、定額料金制になっていくでしょうし、だいたいそういう方向に世の中は向いているということですね。
すでにテレホーダイとかいうのがもう始まっていて、深夜わりと回線が空いている分については一定の定額料金で…というふうにしたら、ものすごく利用が伸びて、却ってその辺りの利用が増えているということすら出ています。
通信に必要な負担は…端末の費用負担、伝送の費用負担、コンテンツの費用負担、3つの合計でくるわけです。その3つの合計が低ければ低いほど自由に使う方向に向かいます。今お話ししているのはその伝送部分の議論をしているわけですけれども、人間というのは「求める情報」に金を出す以上に「それを手に入れるまでの過程」に金を払うことには嫌がる…とくに日本人はコンテンツにすら金を払いたがらない傾向が高いですけれども、ましてやプロセスになんか金出すものかという傾向は強いように思います。
相対コストをできるだけ下げて、そのためには無駄のない経営をするなりして、そうすれば定額にしろ従量にしろ、どのような切り方をするにしても安くなることは間違いないわけです。そういう風なことで競争を促進して、業者間で切磋琢磨してもらって安くていいサービスができるようにしよう…というのがこの10年間の自由化以降の行政の哲学です。
■OCNを裏付けていく経緯〜行政の次なる役割
あとはだから、おそらくは今言いましたようにネットワーク上の問題はだんだんなくなってきていますので、そういう点でいくとこれから利用促進型の定額料金の方へ向かって行くことは間違いない。そこで問題になるのは「銅線」の限界ということですね。インターネットというのは…見てて感じましたけれどあまり奇麗じゃない。サーバーの問題もあれば、端末の処理能力の問題もありますけれども、ひとつには伝送路が遅いという致命的な問題があったりする。圧縮技術がどんどん伸びるにしろ、やはり限界はあって…そうなってくると、いずれ光ファイバーということになってくるわけです。この「いずれ光ファイバーを」という時にどういうふうな形で全国隅々にまで引いていくか、ということが非常に大きな問題になってきます。
電話の場合には国が100年かけてネットワークを整備して、あとはメンテナンスだけになったので自由化をしてきました。ですから、マーケットメカニズムに基づくようになったのは、メンテナンスになってから以降であって、ユニバーサルネットワークを構築する段階ではなっていなかったんです。今後、光ファイバーネットワーク化の時にやはり同じような形で、整備されていくでしょう。おそらくニーズの高いところから整備されていくんでしょうけれども、マーケットメカニズムでどこまでできるか、果たしてそれのみでできるのかどうか、非常に大きな問題です。
NTTにしても株式会社ですから利潤を追及し株主に還元するということが当然求められます。慈善事業みたいなことはできないわけです。そうするとニーズの比較的少ない地方をどうしていくかということがこれから大きな問題になっていきます。ただ次のネットワークは民間が主体として整備していくことは間違いないわけで、それについては民間の方がより設備投資しやすい環境を整備していくようなことがおそらく行政として求められるだろう。民間がマーケットメカニズムに基づいてネットワークを整備し、マーケットメカニズムのみで行かないところを補強するのが行政だろうということになるかと思います。