■蟹鍋の宴と御宅拝見
取材後の宴席は和やかに始まった。なんといっても、格子戸をくぐり、控えの間に薙鉈を掲げてある玄関に一歩入ったときからなにやら予感はしていたが、通されたのはなんとも情趣ある一部屋だ。
床の間には先ごろ徳島城博物館にぜひと請われて出品したという、徳島藩絵師・守住貫魚の双幅の掛軸が掛けられている。二匹の鶴と、水辺の吾妻屋が画題だ。また床の間の右手には漆黒の地に蒔絵が施された棚、襖の闊達な書は著名な書道家の直筆であるそうだ。さりげなくたっていたが、暖気が部屋の外へ漏れぬよう遮断するため石油ストーブの真後ろにおかれた二曲の屏風も、草花模様と和様の書が優雅にちらされた年代ものとお見受けした(私は内心倒れて火がつくことを考えただけでひやひやした)。
このような雰囲気は、いくら美術館や民族資料館にお金を払って入っても、味わえまい。生活のなかに、これぞ「日本文化」といえる調度品が、まったく自然に配され息づいているのは、歴史を深く今に受け継いでいる吉本家ならではのことだろう。決して贅沢なものを見た、という類のものではなく…それはまったく新鮮な感動で、『豊かな生活、豊かな文化』について、思わず見直したくなった。私たちは、ものの価値判断において、高価であるとか稀少であることことをあまりにも中心に据えすぎているのではないか、と。
宴席では、アナコンダ総督より北海道から空輸で送っていただいた立派なズワイガニ(けなげにもまだ生きていて我々を喜ばせた)を中心に、豊富な近海の幸と、もちろん吉本醸造特製のお酒を片手に、お酒の話から、現代の政治、経済の話にいたるまでが話題にのぼり、たいへん有意義なものだった。
やはりここでも、かくしゃくとしてご自分の意見をのべられる岩五郎氏が、幼少時祖父母に接した経験の少ない私のような人間には印象的だった。
吉本家の皆様にも、ここで記して感謝したい。
光宏氏の父君は、県庁を退職後、23年間携わった企業誘致の仕事を記録に残そうと意欲的に執筆に取り組んでいる。奥様はとても心配りの効いた、控えめだが芯の強そうな眼をした方だ。直弘氏の奥様はコンビニ経営を切り盛りなさっており、世界にも通用する腕前のバレリーナでもある娘さんの将来にとても熱心でいらっしゃる。
暇乞いをして外にでると、日が傾きかけてはいたものの、相変わらずの良いお天気だった。しかしなんだか日本近代化100年の時の流れを、酒蔵や御宅を拝見し、吉本家の方々に接することで一気に駆け抜けてきたような気分だった。(おおげさか…)
■予告&リンク
ツルカメ・エクスプレス読者諸兄におかれましては、もとより文化には一家言もった方多し、と思われます。食文化においても然りでしょう。近々、吉本醸造様のご好意により、皆様に蔵元より直接取り寄せたこの冬の本醸造を、お届けできそうな気配です。ご贈答用に、またもちろんご自身の豊かなひとときの演出に、『南国一@ツルカメオリジナルラベルヴァージョン』乞うご期待下さい!!(出荷本数には限りがございますゆえ、どうぞお見逃しなく。)
さて、しばらくそれまでの間、知れば知るほどお酒を飲むのが楽しくなる、そんなお酒知識や、知っておきたいアルコールについてのサイトをご覧になってみてはいかがでしょう。
◆サントリーの「お酒の基礎知識」
http://suntory.dec-j.co.jp/guide/liquor.html
カクテルのレシピやお酒に関する用語集。
→清酒 http://suntory.dec-j.co.jp/guide/sake.html
◆アサヒ 「居酒屋横町」 お酒のおいしい飲み方や旬の銘酒一覧。
http://www.asahi.com/ad/clients/izakaya/
index.html
◆キリン 適正飲酒啓蒙ガイドブック「お酒と健康ABC辞典」
http://www.toppan.co.jp/kirin/story/abc.html
◆武重本家酒造株式会社ホームページ
http://hwgw.hyperware.co.jp/sake/sakeinfo/
tokuhon/index.html
日本酒の品質表示基準などの解説が詳しく書かれている。