刀を皿に突き立てられ,肉を切り落とされても動物たちの間に殺気だった雰囲気は漂わなかった。みんな平等にちゃんと肉をもらえるという安心感が彼らから緊張感をうばったようだ。和気あいあいとした空気さえあるというのは予想外のことだ。
これだけの肉を食べ続けるには大量の生野菜が必要ということで、サラダの奪い合いが起こっていたのは皮肉な現象とでも言おうか。
ふと見れば、と言うか、実は店に着いた時から気がついていたのだが、テーブル上には「もうお肉がいらなくなったら、この札を裏返しにしてネ」というプレートが置いてある。これがあれば無限地獄からも逃れられるわけ。
サイ姫の「牛のコブ肉って肉の繊維がよーく見えるわ」などという医学的?な説明も功を奏して、みんなの食欲もターボエンジン全開とはいかなかった。ただ、この過酷な肉食料理に順応できるのは、青春期を肉食民族の間で送ったサイ姫ただ一人と思われた。肉が一通り供されたあとに出てきたパイナップルのローストが、ことのほかありがたく感じられたのは消化酵素の弱い日本人動物たちであった。
そういうなか、食卓の話題はコンピュータのメモリー増設をいかにして行うかということに及んだ。議論白熱の途上、約1名の動物が、静電気防止の目的のため、パンツ一丁というあられもない姿でメモリー増設作業を行っていることを当然のように告白。他三名の動物たちの爆笑、驚愕と懐疑のまなざしのなか宴は終了したのであった。
(パンツ一丁の動物とは緑色の方のことです)
(おわり)